不定詞の意味上の主語(その1)

次の文を見てください。

  • I want to study hard.(一生懸命勉強したい)
    こんなことを思っている学生は感心ですね。でも実際には、
  • I don't want to study at all.(勉強なんてしたくねえや)
    と思っている学生が多いんでしょうね。(^^;)

    学生諸君だけでなく、お父さんやお母さん、ひょっとしたら先生自身も、
    I don't want to study.
    と思っているのかもしれません。ところが、先生やお父さん、お母さんは君達に対してはきっとこう言うでしょう。
  • I want you to study hard.(おまえに一生懸命勉強してほしいんだよ)

つまり、自分がしたいのではなく、誰かに何かをしてほしいとき、動詞の目的語の位置に「してほしい人」を入れてやれば、『~に~してほしい』という意味になります。すなわち、不定詞(動詞)の動作をする人ということですから、これを不定詞の意味上の主語といいます。上の例文では、文全体の主語は I ですが、不定詞に対する主語は you だというわけです。

このような不定詞の意味上の主語は、want だけでなく、他の動詞でも使えます。いくつか例を挙げましょう。

  • I would like you to tell me the truth.(君に本当のことを教えてほしいんだ)
  • I expect him to become a good teacher.(彼がいい先生になることを期待しています)
  • I asked him to call me tonight.(彼に今夜電話してくれるように頼んだ)
  • The teacher forced me to study everyday.(先生は私に毎日勉強することを強制した)

不定詞の意味上の主語(その2)

次の文を見てください。

  • It is difficult to speak English.(英語を話すのは難しい)
    たくさんの日本人がそう思っていることでしょう。しかし、ちょっと考えてください。実際には何の苦もなく英語を話せる人だっているわけです。ましてや英米人は英語を話すのが当たり前ですから、上の文は「嘘」だということになってしまいます。
    では、次の文はどうでしょう。
  • It is difficult for me to speak English.(私にとって英語を話すのはむずかしい)
    これなら、本人がそう思うだけで、それは「事実」だということになります。つまり、「だれにとって難しい」のかをはっきりさせればいいということです。
    このように、『
    ~が~するのは~である』というような場合の不定詞の意味上の主語は、この例文のように for を使って表します。
  • There is nothing for you to do now.(君たちが今やるべきことは何もない)
  • The library has many books for the students to read.(その図書館には学生が読むべき本がたくさんあります)

ちょっと例外(人の性質を表す形容詞 + 不定詞)

  • It is kind of you to help me.(私を助けてくれるなんて、あなたは親切ですね)

 この文では、「私を助けてくれた」のは「あなた」なので、you は to help の意味上の主語だといえます。しかし、この文は『私を助けてくれたこと』が親切なのではなく、「あなた」が親切だということを言いたいので、このような場合の不定詞の意味上の主語を表すのには for ではなくて of を使います。下の例文を見てパターンを覚えましょう。

  • It is rude of you not to say thank you.(ありがとうを言わないなんて、あなたは失礼な人だ)
  • It was foolish of him to climb the tree.(木に登るなんてことをした彼は愚かだった)